或る邪悪なる魔の一族と戦ってきた、白魔道士カルキ・赤魔道士ガルーダ・緑魔道士シュリー。しかし、彼らの力だけでは、一族を封じ込めるには至らない。限界を感じた彼ら三人は、強大な力を持つと噂されながら全く人前に姿を現わさぬ黒魔道士ヴィラバドラに共に戦ってほしいと呼びかける為、彼が隠れ住むと言われる小さな島に降り立ったが……
江戸は深川佐賀町で亡き師の道場を受け継ぎ北辰一刀流の剣を指南している常陸国《ひたちのくに》志筑《しづく》藩浪人・伊東大蔵《いとう おおくら》(旧姓鈴木)は、元治元年秋、旧知の藤堂平助《とうどう へいすけ》の訪問を受ける。藤堂から“新選組”という勤王浪士の一隊の話を聞き、加盟を勧められた伊東は、その翌朝、奇妙な夢を見た……。
藤堂の紹介で新選組の局長である近藤勇《こんどう いさみ》と会い、加盟を決意した伊東は、甲子《きのえね》の年に因んで甲子太郎《かしたろう》と名を改めると、道場を畳み、何人かの門弟を引き連れて上洛。近藤らと共に無事に壬生の新選組屯所に到着した伊東が、そこで出会ったのは……
新選組に加盟して幾らも経たない頃から、伊東は、新選組を自分のものにしたいという考えを持ち始めていた。しかし、その為には、新選組の実質的な権限を一手に握っている副長土方歳三を味方に付けなければならない。が、当の土方は何故か伊東を疎んじて近寄せない。どうにかして土方と近しくなろうとする伊東は、やがて……
かつての筆頭局長、芹沢鴨《せりざわ かも》。その芹沢と土方との間には、どんな関係があったのか――知りたいと望む伊東に、願ってもない機会が訪れた。土方と一緒に江戸へ下る筈だった沖田総司《おきた そうじ》が、直前になって突然行けなくなったというのだ。すかさず、自分が代わりに同行すると申し出る伊東。思惑通りに土方との旅が始まり……
江戸へ到着して日を過ごす伊東。ある日、土方が郷里へ向かう支度をしているのが面白くなく散々邪魔をしていたところへ、弟子と名乗る青年が訪ねてくる。伊東は動揺した。その青年は、彼にとり、痛恨の過去を否応なしに思い起こさせる相手であったのだ。……やがて郷里から戻ってきた土方に、伊東は、ひとつの賭けを持ちかける。
長月朔日《ながつきさくじつ》、伊東は、上洛以前からの同志である篠原泰之進《しのはら たいのしん》に、いずれ新選組を手中にするという己の目論見を打ち明けていた。土方を味方にしたいという言葉に目を剥く篠原に、その理を説く伊東。だが、篠原は伊東の考えに懸念を示し、或る問を発した……。
……申し訳ありません、これは「いかでちぎりを結ひ留むべき」同様、ウェブ上での全編公開予定はありません。『まなざし』本編「怨憎会苦」の章で発覚した伊東さんの“悪行”をもろに描いた相当に危ない話である為、自主規制です(冷汗)。
ただ、紙媒体作品目録ページに、試し読みページとしてごくごく一部を掲載しています。
伊東が土方に抱《いだ》く感情は、否み難い恋着へと変質しつつあった。彼の周りの者を傷付けても、罪の意識すら覚えられぬ程に。……そして、慶応元年も暮れようとしていた日の夕方、伊東は、その日の朝に己が見た夢を正夢にしようと決意し、土方の居室へ赴いたのだった……
慶応二年初秋七月、伊東の元へ、江戸表の妻から、郷里常陸に暮らす実母が大病であるとの知らせが来たという文が届いた。大恩ある母にもしものことがあっては、悔やんでも悔やみ切れぬ──実弟の三木三郎《みき さぶろう》と共に江戸下向を願い出た伊東は、私事で局を長期に亙《わた》って空けるのは如何《いかが》なものかという副長土方の言葉に遭って凍り付くが……
慶応二年師走、屯所に詰めていた伊東は、自身の休息所から、覚悟していた知らせを受け取った。かねてから体調を崩して寝付いていた妾が、いよいよ危なくなったという。適うことなら看取ってやりたいと考えた伊東が監察を通じて副長土方に外泊を届け出、外出しようとしたところへ……
……えーと、御免なさい、これは紙媒体での刊行の為の書き下ろしとなりましたので、ウェブ上での全編公開は致しません。ただ、別に「危なくて仕方なくて公開出来ない(汗)」とゆーのとは違いますので、試し読みページは置いておきます。
慶応三年正月元旦、伊東は、同僚達を誘って島原へ赴いた。腹心の篠原にだけ明かしていたその目的は、“いずれ新選組からの分離を行う際に、どれだけの幹部隊士を引き抜けそうか確かめたい為”とのことであったが……それは、実は、表向きの目的でしかなかった……。
……これも、紙媒体での刊行の為の書き下ろしとなりましたので、ウェブ上での全編公開は致しません。勿論こちらも、試し読みページは置いておきます。
狂気に駆られて危うく土方を扼殺《やくさつ》してしまいそうになった夜、ひとり夜道を屯所へ戻ろうとしていた伊東は、悶々と考え続けていた。一体何故自分は、最後の最後になって手を緩めてしまったのか……踏み止《とど》まってしまったのか……。だが、思いに耽る伊東の背後から、不穏な気配が迫っていた。
慶応三年二月、九州遊説の最中《さなか》に立ち寄った、天領、豊後国、日田《ひた》。この地で西国筋郡代《さいごくすじぐんだい》配下の役人達からあらぬ疑いをかけられて足留めされた伊東は、嫌疑を解いてほしいのならば──と、或る要求をされる。最初は断固として拒んでいた伊東だったが……
……済みません、これはウェブ上では公開予定なしです。『まなざし』本編で言えば「分離」の章に該当する辺りを書いた、怖過ぎる話なんで、自主規制(冷汗)。
紙媒体に落とす時にも危険度が“許容範囲”に下がりませんでしたので、紙媒体作品目録ページの試し読みページへのリンクで御勘弁を……(汗)。
新選組を“分離”と称して離れてから三月ばかりの後、伊東をはじめとした御陵衛士《ごりょうえじ》の面々は月真院《げっしんいん》に屯所を移した。ささやかな息抜きを目的として同志である新井忠雄《あらい ただお》を供に兵庫津《ひょうごつ》を訪れた伊東は、そこで、ひとりの青年と出会う……。
……これまた紙媒体での刊行の為の書き下ろしとなりましたので、ウェブ上での全編公開は致しませんが、試し読みページは置いておきます。
慶応三年十一月十八日夜──醒ケ井《さめがい》にある近藤の妾宅に招かれた帰途、刺客の刃《やいば》に命を落とした伊東。だが、程なく彼は、己が生者の目には触れることのない亡者としてこの世に魂を留めていることに気付く。それは、土方の側《そば》にいたい、ただそれだけの思い故にであったが……
亡霊として土方の傍らに留まり続ける内に、己の亡霊としての“力”を自覚してゆく伊東。やがて、土方にだけは己の“声”が聞こえてしまうことに気付き……
……済みません、これも、現時点では、入力の予定が立ちません(^^;; 本編下巻の展開が読めてしまう大ネタバレを含む作品ですので(汗)。
慶応四年一月三日、鳥羽伏見の戦いが始まった。三途の川向こうへの道連れを探す戦死者達の魂が頻々《ひんぴん》と行き交う戦場は、この世に留まりたい亡霊にとっては余りにつらい場である。五日になって遂に戦死者達に捕らわれてしまう伊東。もはや逃れられぬと思われたが……
亡者の身でこの世に留まり続ける為の“力”が戻っていないが故に、土方の傍らにい続けることもままならぬ。仕方なく江戸の新選組屯所で茫々と日々を送る伊東は、程なく、大坂から江戸へ戻る船中で幻聴のように聞いた懐かしい声の主のことが思い出されてたまらなくなり……
慶応元年初夏四月。隊士徴募の為に江戸に滞在している土方歳三は、許婚に別れを告げて試衛館道場へ戻ってきたその夜、どうしても寝付くことが出来ず、ひとり稽古場へ出向いて木刀を振るっていたが……
『遺し置く言の葉草の記』「ふみ迷ふ」のカウンターパート作品。つまり、伊東さんの視点から書いた「ふみ迷ふ」で起こった同じ事件を、土方さんの視点から描いたものです。
トップページ3,000カウントをお踏みになったまあき様のリクエストに基づく作品です。既にキリ番小説専用書庫に収録済の作品ですので、リンクを貼っておきます。
『遺し置く言の葉草の記』「ともに散りなん」とも交差する作品。
トップページ10,000カウントをお踏みになったみ〜坊さまのリクエストに基づく作品です。こちらも既にキリ番小説専用書庫に収録済ですので、リンクを貼っておきます。
上の「月に添う影」の前半で採り上げた事件が中心なので、ごく微妙にですが、クロスリンク(苦笑)。後半では、『残し置く言の葉草の記』の書庫未収録作品「目にこそ見えね」で伊東さん(但し亡霊)の回想に登場したエピソードも描かれています。
トップページ20,000カウントをお踏みになったちゃちゃ様のリクエストに基づく作品です。これまた既にキリ番小説専用書庫に収録済ですので、リンクを貼っておきます。
……実は、『まなざし』では全く触れていない時代の話なので、此処に置くのはどうかと思いつつ、でも本にも収録したしなー(苦笑)。
トップページ40,002カウントをお踏みになったねこ田さまのリクエストに基づく作品です。こちらも既にキリ番小説専用書庫に収録済ですので、リンクを貼っておきます。
本編とは視点が違うので、本編で“事実”のように思われたかもしれない事柄が事実とは相違していたことが判明します。隠れ設定のままで終わるところ、皆に知ってもらえて良かったですね、N見さん(爆)。
慶応三年、兄・伊東甲子太郎らと共に新選組を離れて御陵衛士となった三木三郎には、実は、上洛以来気になっていた兄の態度があった。それは、幼い頃に兄の或る一面を知った彼だからこそ、気になっていたことであった……
久し振りにリクエストなしで書いた、拾遺作品。兄である伊東さんの視点から描かれている『遺し置く言の葉草の記』「目にこそ見えね」とも交差しています。
土方歳三の休息所に住まう愛妾きみ。最近、彼女には、心配の種があった。最近何故か殆ど毎日のように泊まりに来るようになった歳三が、必ずと言っていいほど、夜中や明け方にうなされているのだ……
珍しく三人称モノとなった、書き下ろし拾遺作品。『遺し置く言の葉草の記』中巻刊行の副産物とも言うべき一編です。