Entry03『双つ海に炎を奏で』

『双つ海に炎を奏で』 ページ数確認写真 【書名】 双つ海に炎を奏で
【読み】 フタツウミニホムラヲカナデ

【著者】 凪野 基

【表紙込みページ数】 320p

【初版発行日等】 2018年1月21日
【判型】 文庫判
【頒価】 1,000円

【サークル名】 灰青
【ブース】 委託-01

【鈍器概要:250字以下】
神秘を纏う竜の国を襲った突然の地震。
未曾有の災害に動揺する王女ナターシュに救いの手を差し伸べたのは、国交のない北王国の王子を名乗る赤毛の男エドワルドだった。

「北の悪魔」と恐れられる国の王子は援助の代償に、飛竜とナターシュの身を要求する。
政略結婚も王族のさだめと受け入れ、次第に心を通わせるナターシュとエドワルド。安住の国を夢見るふたりの前に、竜の国と北王国の王位継承問題が逃れようもなく立ち塞がり――。
政略結婚から始まる恋愛ファンタジー。読み口軽めの少女小説です。

『双つ海に炎を奏で』 書影
【抜粋:500字まで】
「承知いたしました……わが君」
 押し殺した声はみっともなく掠れて弱々しい。なぜ。なぜ、いつもの声が出ないのか。唇を噛むナターシュの頭上で、ああ、と海賊の王は鷹揚に頷き、それからふと声を潜めた。
「エドワルドと呼んでくれ。その方が気が楽だから」
「はい……エドワルド、さま」
「そうだ、それでいい」
 エドワルドは頬を歪め、船に向かって両手で合図を送る。渡し板が架けられて次々と人が下りてきた。善意を纏った侵略者たちは男も女も屈強で、いちように陽灼けし、髪は色褪せてぼさぼさだ。文官に見えるのは柔和な笑顔を口元に貼りつけた長身の男を筆頭に、ほんの数名しかいない。
 高山地帯が海賊どもに蹂躙される。その想像はナターシュの血の気を奪うのに十分だった。このけだものらが民らの憩う広場や、食堂を我が物顔で闊歩するのだ。そして子どもを殴り、女を犯し、男らを蔑み、蓄えを奪い、竜を我が物にする。
「エドワルドさま。どうかわたくしたち……新しい領民らに狼藉を禁じてくださいませ」
 たまりかねてこぼした声に応じて振り向いたおもては不愉快げに歪み、怒りの光さえ見えた。
――「一、落暉に映ゆ」(13~14ページ)より

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