【読み】 ナイツエランノタタカウリユウ コウ
【著者】 奈木一可
【表紙込みページ数】 342p
【初版発行日等】 2019年10月12日
【判型】 新書判
【頒価】 1,600円
【サークル名】 燎火堂
【ブース】 A-10
【鈍器概要:250字以下】
エースコンバット・ゼロの二次創作。
男装の女傭兵サイファーを主人公に、ゲームの物語を追っていく長編。ぶっきらぼうで皮肉屋だが腕は折り紙つきの相棒と共に過酷な戦争を戦う中でサイファーは破竹の勢いで名を上げてゆくものの、次第に在り方を変えていく戦況に翻弄され、ついには唯一無二の相棒との訣別に至る。
コインの表裏のような二人が再び対峙する時、何を思い何を選ぶのか――
【抜粋:500字まで】
「ピクシー」
呼んで、掴んだ顔を引く。ブルーグリーンが大きく見開かれて、唇が震えるのが視界の端に見えた。距離が更に縮まる。俺は少し背伸びをして、顔を寄せた。触れるのは、ほんの一瞬だけ。
贈るのは祝福。別れる憧憬、その額に口付けを。
最初の相棒にされたように、最後の家族にされたように。今度は俺が、最後の相棒に捧げよう。
掴んでいた顔から手を離して身を引くと、ピクシーは目を丸くして絶句していた。文字通り言葉を失った姿は、どこか滑稽ですらある。あんまり笑うとさすがに怒られそうだから、ささやかに留めておくが。
「俺にはもう何が幸せなのか、幸せがどんなもんかも分からない。だから、願いが叶うにしろ叶わないにしろ、あんたが健やかであればいいと願うよ。――ま、悪運の強い〈円卓の鬼神〉の祝福だ。たぶん、少しはご利益あるぜ」
いつか俺に墜とされる間までのことだとしても。そう付け加え、にやりとしてみせる。
本音を言えば、そんな事態は勘弁してもらいたいけどさ。それこそ吐くだの寝込むだのじゃ済まないだろう。だが、今はそう言うより他にない。少しでも上手く、別れようと思うのなら。
――「1995/6/2 Parting」(112~113ページ)より
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