【読み】 ウロヲツナグモノ
【著者】 堤 一三三
【表紙込みページ数】 386p
【初版発行日等】 2019年5月6日
【判型】 文庫判
【頒価】 1,800円
【サークル名】 雫星
【ブース】 B-05
【鈍器概要:250字以下】
【刀剣乱舞二次創作、刀剣男士×創作女審神者あり】意図的に仕組まれた任務により、強制出陣の末負傷した審神者。寝込みながらも本丸を徘徊する珍現象に男士らが手を焼く中、山中深くの本丸に囚われた亡霊の怨讐が蘇る。長編第2巻。
【抜粋:500字まで】
確認のような会話の端々で、青竹色の瞳が不安に揺らぐ。あれは、自分の目を見ながら違う自分を見ていたと、零した。
ぐるりと彩度の欠けた世界が流転する。
夢。というものは脈絡がないと、つい最近知った。鬱蒼とした死の匂いは確実な一幕となり、遂に第三者が足を踏み入れる。
ぴんと背筋を伸ばし、黒髪を揺らし、女は進む。震える手足を隠して、充満する腐敗臭に顔を真っ青にさせながら。それでも進む理由を、今なら知っている。狂気じみた自責の念、正義感、自己犠牲。成さねばならぬという、強迫思考。
まず、女は虫の集る骸に両手を合わせていた。
次に、心が朽ち果てそうだった一振に声をかけ、手を伸ばした。握られた手を握り返し、女は此方を向いて、告げる。
『せめて最期は』
はて、何と言ったか。震える声は、何と告げたか。
花が舞っていた、気がした。
庭には薄紅の濃淡が広がっている。風に煽られるものを眺め、耳には土を掘る小気味よい音が届く。
罪か、罰か、呪いか、すべてか。
答えは得られず仕舞い。
――「呪いと祝いと桃の頃」(142~143ページ)より
【Webカタログ】 https://plag.me/p/textrevo09/7794