Entry11『桜吹雪の真ん中で』

『桜吹雪の真ん中で』 ページ数確認写真 【書名】 桜吹雪の真ん中で
【読み】 サクラフブキノマンナカデ

【著者】 ヒビキ ケイ

【表紙込みページ数】 372p

【初版発行日等】 2018年5月6日
【判型】 四六判
【頒価】 1,500円

【サークル名】 シュガーリィ珈琲
【ブース】 D-13

【鈍器概要:250字以下】
思えばずっと側にいてくれた。困った時も、躓きそうになった時も、泣きそうになった時も、側にいて励ましの言葉と飴玉をくれた。笑わせてくれた。この人は飴玉みたいに甘くて優しい。女子大生と高校教師の歳の差ラブストーリー。

『桜吹雪の真ん中で』 書影
【抜粋:500字まで】
 この人の香りに妙に落ち着くのは、この部屋と同じだからだったんだ。
 準備室は高校時代の思い出がいっぱい詰まっている部屋で。唯一の憩いの場だった。
「お、コンビ。もうちょい待ってて。これだけ仕上げちゃうから」
 この呼ばれ方も久しぶりだ。放課後に遊びに行くたびに「でたな、高野・相沢コンビ」と言いながら、ミルクティーを作ってくれたり、愚痴を聞いてくれたり、チョコをもらったりした。
朝、ユウヒ兄に会いに行くと、「今日も夜討ち朝駆けか、おはよう」と言われた。放課後は、息抜きと称して高野と一緒に会いに行った。
〝いつも側にいたのは誰だった?〟
 パソコンと睨めっこをして仕事を続けているコウくんの後姿を眺める。社会人の大人の背中。プライベートだと子供のような行動もするけれど、間違いなく先生の後姿だった。ユウヒ兄と同じ。対等になれない背中。
 遠い。手を伸ばせば届く距離なのに、触れない。胸がチクリとして、ギュッと拳を胸に当てた。
 何となく、気づいてはいる。あの夢を見た時の、どうしようもない焦りと悲しさを。高校時代に抱いていた好意とは明らかに違う感覚を。だけど、答えは見えない。
〝答えがあるって分かったら、解けたも同然〟
――「ありったけの愛を」(162ページ)より

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