『The 103rd ざ・とさーど』紹介

 初頒布イベントも終了し、「架空ストア」さんへの納品も済ませましたので、遅れ馳せながら、内容紹介の記事を作っておきます。



 スタール王国の都レイリーで軽い昼食を摂っていた俺・サラ=フィンクとミルシェは、同じ店に入ってきた奇妙なふたり連れにふと目を惹かれ……

『The 103rd』書影
 野間みつね個人サークル「千美生の里」の刊行物が、2022年8月、通算100冊を突破。
 有志の皆さまからのお祝いメッセージや作品、そして野間みつねからの返礼作品を併せて収録した、記念の一冊。

 A5判上製本、表紙込み80ページ、頒価500円。


【有志の皆さま】(五十音順)

  • 猪川朱美(星村朱美)さま
  • イラスト2種:『ミディアミルド物語』から(過去作再録)
    イラスト:『魔剣士サラ=フィンク』から(過去作再録)
    イラスト2種:『まなざし』から(過去作再録)
  • 高井玖実子さま
  • イラスト:『まなざし』から(過去作再録)
    漫画:『まなざし』から(過去作再録)
  • たつみ暁さま
  • 小説:「ある日、ある時、すれ違う」
    (たつみ暁さま作『アルテアの魔女』から、主人公エレとインシオンが、『魔剣士サラ=フィンク』のリファーシア世界へ御来訪)
  • 服部匠さま
  • イラスト:『レジェンダリィ・クレイン』から
  • 服部つぐのりさま
  • イラスト2種:『通り名《ランナーネーム》はムーンストーン』から
    イラスト:『魔剣士サラ=フィンク』から
  • 和田明美さま
  • イラスト:『ミディアミルド物語』&『魔剣士サラ=フィンク』から
 因みに、皆様からのお祝いメッセージは全て新規に頂いたものです。
 一部は帯のアオリに使わせていただきました。

『The 103rd』帯

【当方の返礼作品】(掲載順)

  • 「恩讐の彼方」:『レジェンダリィ・クレイン』から、服部匠さまへ
  •  ストレートな「カウンター」作品ではないものの、頂いたイラストとも関わりのある短編を執筆しました。
     以下、各作品の引用部分は全て書き出しからです。

     俺・頼山紀博《よりやま のりひろ》が、当面の居住地としている植民惑星マスタードから凡そ十年振りに地球へ戻ったのは、旧い知人が亡くなったとの連絡を、地球在住の旧友から貰ったことが理由であった。
     当の旧友の許へ訪ねていくと、「君は相変わらずの神出鬼没だな。また超・超遠距離を瞬間移動《テレポーテーション》してきたのか」と半ば呆れたように笑われた。
    「何を今更。情報局だって、俺の動向は大体把握してるくせに」
    「まあ、緩い監視は続けているだろう。俺が、いざという時に君に連絡出来る無料《フリー》メールのアドレスを教えてもらってもいることだし」

  • 「メンテ雑談」:『通り名はムーンストーン』から、服部つぐのりさまへ
  •  こちらも直球の「カウンター」ではないですが、服部つぐのりさんが御贔屓の登場人物を語り手とした小編です。

    「おい関《せき》、お前、今日は午後から特休《スペホリ》だったな」
     同じチームの司馬サンから確認されて、ワタシは「ハイ」と頷いた。
    「そろそろ抜けますから、後は宜しくお願いしますネ」
    「えっ、美羽《みはね》さん、午後から居ないんですかーっ?」
     司馬サンの隣のデスクでノート型の端末と格闘していた同僚のエージ……杉村栄治クンが、ワタシと同い年という年齢の割に爺むさい顔立ちに全く似合わない、かーなーり情けない声を上げる。……あー、そう言えば、藤田チーフに提出しなきゃいけない明朝締切の資料があったっけネ。ワタシに手伝わせるつもりだったのかなー?
    「ごめんネ、隔週の定期点検《メンテ》が入ってて」
    「あぁ、目と耳のですね……仕方ないですね、ううう……」
    「こーら杉村、その程度の資料、ひとりで仕上げろ。――関、お疲れさん」
    「有難うございます、お先に失礼しまーっす!」
     ……改造人体《サイボーグたい》という代物《しろもの》は、色々と面倒臭い。

  • 「リファーシア新暦五二一年、夏の盛り、レイリーにて」:『魔剣士サラ=フィンク』から、たつみ暁さまへ
  •  今回唯一の、由緒正しき(笑)カウンター作品です。
     たつみさん作「ある日、ある時、すれ違う」を承ける形で執筆させていただきました。
     ……本題に入るまでの部分でも一本短編が書けるよな、という密度になりましたけれど(汗)。

    「……ねえサラ=フィンク、あれって、どういうことだったの?」
     そこそこ繁盛している様子の小料理屋に入り、比較的奥まった空き卓に席を求めながら、ミルシェが小声でぼやく。
    「正直、何が何だか、あたしには事情が掴めなかったわ……」
    「あれ以上の面倒に巻き込まれなくて好かった、と思っておけ」
     俺は小さく肩を竦め、寄ってきた給仕の少年に、摘まみ程度の軽食と林檎酒《シードル》一杯ずつとを頼んだ。
     ……この世界《リファーシア》で、〝商人たちの国〟とも呼ばれている、スタール王国。その都である〝道の集う町〟レイリーに、〝念術王国〟ハングォ王国第二の都市ランダからの海路を経て五日前に到着した俺サラ=フィンクとミルシェは、降り立ったばかりの港でちょっとした騒動に巻き込まれ、その後始末という形で、不本意ながら古代ダランバース魔道王国時代の遺跡探索に同行する羽目に陥った。

  • 「ジョディちゃんの居ない世界」:『ミディアミルド物語』から歴史ifスケッチ、和田明美さまへ
  •  由緒正しきカウンター作品を差し置いて、最も長くなってしまった作品であります(汗)。
     和田さんから頂いたイラストで『ミディアミルド物語』の女性武人デフィラさんが何とドレスをお召しになっていたので(!)、彼女がドレスを着ることの出来る世界線があるとしたら……? と「歴史if」を敢えて書いてみたのでした。
     引用は、作者のお喋り部分を除いた、本編冒頭からです。

    「花嫁衣装を作ることは、百歩譲って仕方ないとしよう。……だが、それ以外の裾長服《すそながふく》は、どうしても作らねばならぬものなのか?」
     私の問い掛けに、タリー・リン・ロファ一等近衛……否《いな》、既に手続上では昨年の内に婿入り済で、嫁名《よめな》の〝タリー・リン〟で呼ばれるようになっている青年は、「必要ですよ」とあっさり頷いた。
    「披露宴まであと二か月足らず、花嫁衣装での立居振舞にお慣れになる為にも、出来るだけ色んな裾長服を拵えて、今からお召しになっておかなくては。……この程度のささやかな我儘は言わせてください。強引に婿にされた私の方が、身も細る思いをしているんですから」
    「……この臥所《ふしど》での今し方までの振舞が、身も細る思いをしている男のものだとは到底信じられぬが?」
     ……以下自粛(笑)。

  • 「身にも知られず」:『まなざし』傍話集『残し置く言の葉草の記』から、猪川朱美さまと高井玖実子さまへ
  •  再録への返礼は再録で、ということで、過去にWeb上の交換日記(nikkijam)で連載した切り、紙媒体どころか自サイトにすら未収録だった作品を再録しました。
     おふた方共に『まなざし』の伊東甲子太郎《いとう かしたろう》(但し亡霊)先生を描いてくださっていることもあり、亡霊先生が語り手です。

     土方《ひじかた》の愛馬、赤糟毛馬《あかかすげうま》早蕨《さわらび》号は、馬の分際で、亡霊である私の姿を見ることが出来る。
     そればかりか、噛み付いたり脚《あし》で押さえ付けたり顔を舐めたり、要するに、最早肉の身を持たぬ私に触れることも出来る。
     そして極めて腹立たしいことに、私が誰にも姿を見せようとしていない時でさえ、私の姿が見えているらしかった。
     ……まあ、だからこそ、川岸から二度目の帰還を果たしながらも力尽きようとしていた私を捉えることが出来たのではあろうが。
     とは言うものの、隠れていたい時にまで隠れられないというのは、好きな時に好きな相手にだけ姿を見せることの出来る亡霊としての己に慣れ切っていた私にとっては、かなり都合の悪い状況と言わざるを得なかった。
    〈仕方ないであろう。見えてしまうものは〉
     と、彼は言う。
    〈別段、おぬしに限って見えるわけではないぞ。人であるか獣であるかを問わず、亡者の魂は嫌でも見える〉
    〈……見えているようには見せないところが曲者《くせもの》ですね〉



 以上、内容の簡単な御紹介でした。

 自家通販は準備が出来次第になりますが、それより早く、6月10日(土)の09:00から「架空ストア」さんでの販売を始めます。

 『The 103rd ざ・とさーど』販売ページ(@架空ストア)
 内容のチラ見せ写真も多数掲載していますので、覗いてみてやってくださいませ。

 但し、関西方面にお住まいで、6月11日(日)に京都市で開催される「そこの路地入ったとこ文庫」さん現地に行ける方は、そちらの方がより早く入手出来ると思います(笑)。