伊東甲子太郎
《いとう かしたろう》先生のフィギュアが出るそうな。
そんな情報に接したのは、行きつけサイトの掲示板であった。
程なくその情報は、拙
《せつ》サイトの掲示板にも飛び火した。
世は何故
《なぜ》かフィギュア・食玩
《しょくがん》ブーム。へえ、伊東先生までもがね〜、と思っていた私の許
《もと》へ、十二月十一日、白牡丹
《はくぼたん》さんからメールが届いた。以下、暫
《しばら》くは日記風に綴
《つづ》ってみたい。
※※※
二〇〇三年十二月十一日(木)
「某ネットオークションに伊東せんせが出品されてます。御関心はありませんか?」
白牡丹さんからの情報によると、出品されている伊東さんフィギュアの最低落札価格は、何と一円。で、今は最低価格が付いているという。
如何
《いか》に知名度が低いからって、一円かい……(涙)
などと思いながら、教えてもらったヤフーオークション(以下、ヤフオク)の当該ページへ行ってみた私、商品写真に釘付けになる。
フィギュアが着用している黒羽織に、庵木瓜
《いおりもっこう》紋が付いている!
庵木瓜紋は、会津若松の白虎隊伝承史学館に展示されている“伝 伊東甲子太郎所持 庵木瓜紋
│韮山笠
《にらやまがさ》”にも付いていた紋である。ううーむ、このフィギュアの制作者は、ちゃんと勉強して作ったらしい。出品者の写真の写し方が巧い為
《ため》、逆に多少荒削りな部分がしっかり見えてしまうが……それでも、持っておきたいぞ。
私はすぐに、白牡丹さんに入札をお願いした。
そもそも、伊東さんを扱ったフィギュアが出てきたということ自体が驚きである。土方
《ひじかた》さんクラスの人気筋の人物とは残念ながら言えないから、今後またこのような物が出るかどうかわからない。
入札してくださいとお願いした時点で、目敏
《めざと》く見付けたらしい人が何人かいて値段はわずかばかり上昇していたが、白牡丹さんの参戦で五〇円になり、そこで落ち着いた。
同一出品者の出品リストで周囲を見回すと、同じシリーズの勝海舟
《かつ かいしゅう》、桂小五郎
《かつら こごろう》、岡田以蔵
《おかだ いぞう》の他に、斎藤一
《さいとう はじめ》の名が。……そちらは軒並十一円、白牡丹さんが参戦する前の伊東さんの価格であった。
そう言えば、拙宅掲示板で最初に紹介されたお店では、このキューブ製「幕末維新」シリーズ其
《そ》の二の中で、伊東さんと斎藤さんが単品最安値で四八〇円だったんだよなあ……。
しかし、これは仕方ないだろう。シリーズのラインナップを見る限り、他の面々は、幕末史に関心のない人でも名前ぐらいは聞いたことがあるだろうという人ばかり。他方、伊東さんと斎藤さんは、新選組ファンにとっては知ってて当然のメジャーな人物だが、一般での知名度は今ひとつどころか、客観的に見れば“今五つ”ぐらいだ。値段の差は、知名度の低さと考えて良い。
しかし何しろオークション中である為、不特定多数の人が目にする交換日記ではネタに出来ない。野間、その程度には利己的である。……うう、でも喋
《しゃべ》れないのは欲求不満。おのれ〜、終わったら即刻お馬鹿随想にしてやる〜。
十二月十二日(金)
斎藤さんフィギュア、午前中に四〇円に値上がり。夜には勝さんも値上がりして四〇円になる。
伊東さんは動かず。このまま五〇円で落札出来たら凄いけど、それも何だか寂しいよねえ、と白牡丹さんとメールを交わす野間。
十二月十三日(土)
伊東さんの新暦変換命日。この日は、どのフィギュアにも値段の動きなし。
十二月十四日(日)
夜、斎藤さんの所に新規参戦があったらしく、突如値上がり。一三〇円となって伊東さんの値段を抜く。ちょっぴり悔しい(笑)。
十二月十五日(月)
オークション最終日。このまま五〇円で落札だろうか……
……いやいや、世の中そんなに甘くない。
まったりとしていたオークションが動いたのは、終了までの残り時間が五時間を切って間もなく。
何気なくページの再読込をかけたところ、ほんの何分か前まで五〇円だった伊東さんフィギュアの値段が、二六〇円に跳ね上がっていたのである。
げげげっ。すわ、競争者出現!
勿論、白牡丹さんにはそれなりの上限を示して張ってもらっていたので、自動的な応札で相手より高値を維持出来てはいたが、此処まで一気に値上げを仕掛けてくるとは要注意である。
これはお知らせしておこうと白牡丹さんにメールを叩
《たた》きながら、ふと再度ページ再読込をかけると……げげげげっ、敵がまた手動入札して更に値を吊り上げてきたではないか。
結局、わずか三分の間に、五〇円が一気に三二〇円に跳ね上がり、斎藤さんフィギュアに付けられた値段二一〇円(あれ、こっちも値上がりしてるぞ……あ、こっちと同じ人が吊り上げてる)を軽く引き離してしまったのであった。
……その値上がりをリアルタイムで目撃した私の運も、結構なものかもしれない(苦笑)。
このまま行くだろうか。それとも、終了前にまたひと波乱あるだろうか。当面の敵(笑)は、此処に参戦する前に、沖田君のフィギュアを一〇〇〇円払って落札しているようだ。出品者が並べている一連の「幕末維新」シリーズでも、伊東さんと斎藤さんにしか入札していない。新選組在籍経験者のフィギュアだけに参戦しているということは、それなりに新選組のファンであるに違いない。終了間際に一戦仕掛けてくるかどうかは伊東甲子太郎という人物への執着の度合にもよるだろうが、用心はしておこう。
飲み会があるので暫くウェブに入れないという白牡丹さん、上限価格を更に吊り上げて入札し直しておいてくれた。有難いことである。
残り三時間
残り二時間強となった頃
《ころ》、岡田さんも若干
《じゃっかん》値上がりして四〇円に。
ううむ、人気ないなあ、桂さん(苦笑)。このまま十一円で落札か?
残り二時間
残り二時間を切ったところで、斎藤さんの値が急上昇を始め、結局四一〇円に。……ふーん、ということは、伊東さんにも入札していた人、斎藤さんには四〇〇円までなら出せると設定していたわけか……伊東さんには三一〇円までだったのに(苦笑)。……おおっと、新たな参戦者は即座に手動入札で上限価格を補強した模様。本気で落札したいという意気込みを感じる。
他の三名はまだ四〇円が最高値。新選組在籍経験者、強し(爆)。
……と思ったら、岡田さんが急に値を上げて二一〇円となった。新たな参戦者が出た模様。
残り一時間
今のところ動きなし。
帰宅したばかり。今の内に急いで風呂に入ってこよう。
残り三十分
風呂から出てきたら、おおっ、勝さんが二三〇円に値上がりしている。桂さんも十一円から脱出していた……しかしまだおひとりだけ二桁台のお値段である(汗)。
残り十五分
特に動きなし。今の内に弁当箱とマスクを洗おう。ごしごし……
残り十分
洗い物終わり、戻ってきて再読込……あ、桂さん二桁台脱出、一二〇円に。
残り五分
伊東さんは現状維持。このまま動かないで行くかな……
残り十分 ←間違いではない(泣)
げっ!? 再読込したら、終了時刻が後ろにずれてる!?
残り五分を切ったところでいきなり参戦者が現われ、自動的に締切延長となったのであった。その新たな敵(爆)との攻防で値段はボコボコ上昇、遂に五三〇円に跳ね上がる。
詳細な入札履歴を見てみると、相手は、自動応札に阻
《はば》まれる度
《たび》に七回も手動入札を仕掛けて挑戦してきていた。私が言うのも何だが、そんなに値を吊り上げてまで入手したいのか? 探せば他所
《よそ》に、もっと安い(……今となってはね)伊東さんフィギュアが出品されてるとゆーのに(汗)。
残り五、四、三、二、一分……そして終了
五二〇円以上は出せないと相手が諦めたのか、再度の挑戦はなく、どうにか逃げ切り。丁度日付の変わる頃に落札決定した。入札してくれた白牡丹さんに大感謝である。
落札価格、五三〇円……結果として、この時ヤフオクで別に出品されていた伊東さんフィギュアの即買価格四二〇円も、また、もう一点の同フィギュアの希望落札価格四八〇円も、かーるく超えてしまった。ま、これがオークションの面白いところであると言えよう。
斯
《か》くして、一円から入札が始まったこの伊東さん、ヤフオクでの他の出品価格や通販サイトでの設定価格より高くなってしまったわけだが……実は「一〇〇〇円超えてもいいです!」と頼んでおいた野間、この結果に不満はない。随想のネタにもなるし(笑)。
ちなみに、斎藤さんの落札価格は四七〇円。伊東さんフィギュアに残り五分で入札かけてきた人と同じ人に、こちら同様残り五分弱で殴り込まれて値を上げられたが、結局、残り二時間を切ったところで参戦してきた「本気だな」と感じた人が逃げ切っていた。以下、高値落札順に、岡田さんが四五〇円、勝さんが三九〇円、桂さんが一三〇円(汗)、という結果である。ううむ、新選組在籍経験者、最後まで強し(笑)。……しかし、同一人物に競
《せ》りかけられて伊東さんの方が斎藤さんより高くなったということは、最後の敵(笑)は伊東さんの方により執心だったということかいな……
※※※
狂騒(?)の一夜が明けた翌十六日、今回落札したフィギュアの出品者が運営している通販サイトを何気なく覗
《のぞ》いてみたら、今回出品された面々が一律五〇〇円で売られていた。
……ということは、伊東さんだけ、この出品者が本来付けていた元値より高値で落札されちゃったわけか(苦笑)。
これもまた、オークションならではの現象。安く出品されていても、競り合っている内に元々の売値より高くなってしまうことがあるのである。
しかし、それでもやっぱり、伊東さんのフィギュアは安いよなーと思う。
だって……オークションでは、近藤さん・土方さんのフィギュアは、付いている値段の桁が違う。この一連の騒動中に沖田君フィギュアの一〇〇〇円落札を見付けたが、それは多分、最低ライン。私がこれを書いている頃に進行していた或
《あ》るオークションでは、近藤さんフィギュアに六五〇〇円近い高値が付いた。土方さんも、そこまでではないが、結構な値段だ。白牡丹さんからは、以前落札を試みたものの一五〇〇円を超えた時点で断念した……と聞いていたけれど、件
《くだん》の近藤さんと同時期の物件が二〇〇〇円で落札されている。ちなみに沖田君は……余りに高値で出品されてて流石
《さすが》に入札者がない。まずは安値からスタートさせないと、入札者は寄ってきませんわよ(汗)。
それはともかく、とにかく伊東さん、局長副長に比べると余りに安い。
高騰
《こうとう》してほしいとは思っていないけれど、ちょっぴり寂しい気がする野間であった。
おまけ
余談ながら、オークションに出品されている伊東さんのフィギュアを探すにはちょっとしたコツがあるので、オークションで入札してみたいなーという方の為に御紹介しよう。これは、白牡丹さんから伝授された方法である。
それは……
「伊藤甲子太郎」でも検索してみること(爆)。
えー、つまり、知名度が低い悲しさで、誤字で出品登録してしまう人が時々いるというわけなのだ。
そういう人の出品しているページは、正しい人名での検索には引っかかってこないので、入札者が来ないケースがある。現に、この随想を叩いている時に出品されていた「伊藤甲子太郎」名義のフィギュアには、遂に入札者が現われなかった……え、開始価格が四〇〇円というのが高いだけ?
これに私なりのアドバイスを付け加えると、人名で検索する時には、姓と名の間にスペースを入れた方が良い。これは、姓名をつなげて検索すると、姓と名の間にスペースを入れて出品登録している人のページが引っかからないからだ。……関連品が多数出品されている別の人名(……土方歳三《ひじかた としぞう》……(汗))で確認したので、間違いない。
以上、御参考になれば幸いである(苦笑)。
更におまけ
……として、競り落としてもらったフィギュアの写真を公開(汗)。
写真集のページも作成したので、御興味のある方はどうぞ(爆)。
但し、写真の枚数が多いので、ナローバンド環境の方は御注意を。
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